タイトル 
ワン フロム・ザ ハート[1982/上映時間:1時間47分]
監督 
フランシス・フォード・コッポラ   ハンク フレデリック・フォレスト
製作 グレイ・フレデリクソン   フラニー テリー・ガー
フレッド・ルース   レイ ラウル・ジュリア
製作国   ライラ ナスターシャ・キンスキー

 「ゴッドファーザー」を作り「地獄の黙示録」を作ってつねに話題の渦中にあり、壮大な構想のもと、映画界に揺さぶりをかけ続ける当代きっての 映画人フランシス・コッポラ。

 この映画の巨人が、過去からの素晴らしい贈り物としての映画と、新しい時代へ向って突き進む映画製作技術を結ぶ美しい夢として生み出した 「ワン・フロム・ザ・ハート」は、映画にまったく新しい時代が到来したことを告げている新趣向のエンタテインメントだ。

 その装いは、1930年代に評判をとったケイリー・グラントやキャロル・ロンバードらが主演したロマンティックなドラマに似ている。男と女がいて、 恋のゆきちがいや新しい出逢いがある。素敵な歌があり、チャーミングなダンスがあって、いかにも懐かしい。けれど、恐らくは完成の極地ともいうべき ビデオ技術の縦横無尽の活用から生まれたものだ。

 キラキラと輝く映像は、最新の技術を借りて昔の映画にあった暖かさや心やさしさを取り戻し、観客を胸ときめく夢の世界へと誘い込む。そこにある スウィートな愉しさは、映画がこの世の最大の娯楽であった時代の情緒をたっぷりとたたえているのである。

ドラマの舞台になるラスベガスの街は、はじめにビデオカメラで撮影され、それをもとに、コッポラをオーナーとするソエトロープ撮影所内に作られた セットで鮮やかに還元されている。建物も道路も樹木も、そして郊外の砂漠さえ還元されているのだが、この砂漠に女体の曲線を求めるあまり、本物の 女性を砂に埋めて撮影したというのだから、巨人コッポラの面目躍如である。

 スクリーンに、青い緞帳が映し出される。それが静かに真ん中から左右に引かれていくと、今度はスクリーンいっぱいにキラッと光る無数の星が 姿を見せる。つぎの瞬間、星をバックにキラキラとしたタイトル・ロゴ“One from the heart”が左下から右上にかけてクレジットされる。幕は上がった。
 さあ、きらびやかなラスベガスを舞台にした、心暖まるシネ・ロマンスのはじまり、はじまり……。

 7月4日の独立記念日を明日に控えた、ここラスベガスの街。普段にも増して、往来の沿道は観光客でごった返していた。
 ツーリスト・ビューローに勤めるフラニーは、そんな観光客をよそにせっせとショー・ウインドウの中でディスプレイに汗を流していた。飾り付けが 一段落したしたところで、フラニーは奥のオフィスへと戻っていった。

 同じ頃、フラニーの同棲相手ハンクは、相棒のモーといっしょに油にまみれてうす汚れた顔をぬぐっていた。ハンクはラスベガス郊外にある、小さな 自動車解体工場の共同経営者のひとりだ。
 2人は、同棲生活5年目を迎えていた。が、フラニーは平凡な毎日の生活になかばヤケ気味状態。

 突然、レイと名乗る若い男が、ガラス越しに声をかけてきた。同じ頃、ハンクはモーを連れ出して、街まで来ていた。沿道の片隅で広告写真を撮って いた、サーカスらしき一座の踊り子ライラのまがゆいばかりの美しい姿がハンクの目に飛び込んできた。2人は互いに視線を合わせながら、微笑を浮かべる のだった。

 …ハンクが家に帰ってまもなく、ドアのほうで物音がした。部屋の明かりも、いつのまにかついた。ふとドアのほうに目をやると、フラニーがつっ立って いた。
 左右から、青い緞帳がひき戻されてくる。幕は降りた。…と思いきや、あらためてタイトル・ロゴが映し出されて、映画のカーテン・コール。

フレデリック・フォレスト
「伝説が死ぬとき」(72・未公開)
「ザ・ファミリー」(73)
「ダイアン兄弟」(73・未公開)
「カンバセーション/盗聴」(74)
「ミズーリ・ブレイク」(76)
「地獄の黙示録」(79)

テリー・ガー
「カンバセーション/盗聴」(74)
「ヤング・フランケンシュタイン」(74)
「名犬ウォン・トン・トン」(74)
「オー!ゴッド」(77)
「未知との遭遇」(77)
「少年の黒い馬」(78)
「未知との遭遇/特別篇」(80)

ラウル・ジュリア
プエルトリコ生まれで、根っからの舞台人。
「ワン・フロム・ザ・ハート」が映画デビュー作。

ナスターシャ・キンスキー
1961年ベルリン生まれで、父親は怪異な容貌で知られる性格俳優クラウス・キンスキー。
「レッスンC」(78)
「テス」(79)
「今のままでいて」(79)
「キャット・ピープル」(82)

フランシス・コッポラ監督
「死霊の棲む館」(63・未公開・テレビでは放映)
「きみはもう大人だ」(66・未公開)
「フィニアンの虹」(68)
「雨のなかの女」(69)
「ゴッドファーザー」(71)
「ゴッドファーザーPART2」(74)
「カンバセーション/盗聴」(74)
「地獄の黙示録」(79)