タイトル 
マンハッタン[1979/上映時間:1時間36分]
監督 
ウディ・アレン   アイザック ウディ・アレン
製作 チャールズ・H・ジョフェ   メリー ダイアン・キートン
ジャック・ロリンズ   エール マイケル・マーフィ
製作国   トレーシー マリエル・エミングウェイ

 黄昏のニューヨーク、マンハッタン。そびえる摩天楼の彼方から、あの“ラプソディ・イン・ブルー”が流れてくる。
 郷愁のガーシュイン ・メロディに乗って、今日も愛の真実を追うニューヨーカー1人。別れた悪妻、翔んでるキャリア・ウーマン、ウブな女子高生…多彩な女性遍歴の果て にやがて訪れるホロ苦い恋の週末。いつしか都会人種のやるせない吐息も聞こえてくるような・・・。

 「アニー・ホール」(アカデミー賞4部門受賞)「インテリア」を放って益々意気上がる喜劇の天才ウディ・アレンの最新作は、またもカレの “心のふるさと”ニューヨークを舞台とした珠玉の愛のドラマだ。シリアス作家を目ざすネイティブ・ニューヨーカーと彼をとりまく友人、女性たち を主人公に、摩天楼に生息する都会人種の不器用な恋愛事情が、皮肉たっぷり且つロマンチックに描き出され、同時に感動的なニューヨーク賛歌になっている。

 例によってウディが盟友マーシャル・ブリックマンと共同で書いたオリジナル脚本を、ウディが演出し、主演もしている。共演はダイアン・キートン、 マリエル・ヘミングウェイ、マイケル・マーフィ、メリル・ストリープ、アン・バーンなど適材適所のキャストが絶妙な演技アンサンブルを発揮し、 ウディ・アレンのユニークな世界を盛り上げている。特筆すべきは、色彩撮影以上に色彩感覚をだしたゴードン・ウィリスのモノクロ・キャメラ。

 音楽にジョージ・ガーシュインのシンフォニック・ジャズが全編に散りばめられているのも話題。「ラブソディ・イン・ブルー」「ス・ワンダフル」 など名曲の数々がズービン・メータ指揮ニューヨーク・フィルハーモニックの名演で生き生きと甦っている。白と黒のコントラストの中に把えられた 都会の息吹きが実に鮮やかだ。

全米興業は4月下旬のスタート以来、79年5指に入る大ヒット・ロングラン。
 鬼才アレンの最高傑作のみならず、70年代掉尾を飾るに ふさわしいアメリカ映画の心優しき快作になっている。−B&Wパナビジョン。5巻(2,626m)1時間36分−

 ニューヨーク・マンハッタン島。ビルの谷間に灯がともる頃。ここ“エレーンのレストラン”で四人の男と女が軽い会話に花を咲かせている。
アイザック・デイビス(ウディ・アレン)は42歳の中年ニューヨーカー。元TVのショー番組やコメディものの売れっ子ライターだったが、 ドロップアウトして、いまシリアスな小説を書こうと奮闘中。性格的には気弱でだが、極めてロマンチストだと自分では信じている。

 アイザックの隣にいるのが、ドルトン・ハイスクールに通う今年17歳のトレーシー(マリエル・ヘミングウェイ)。何とこれがアイザックがいま 同棲中の恋人だというから世の中わからない。年の差25!彼女の父親より年上という関係で、どっちかというと少女の夢中で、アイザックはこれ以上 深みにはまることにくばくかの危惧を感じている。これを中年の思慮と呼ぶべきか、はたまた打算というべきか。

 こんな彼をみると同世代からやっかみの声が飛んできそうだが、それは半分マト外れ、とアイザックは反論するかもしれない。何故なら彼には 過去2度の結婚に破れたという不幸な実績(?)があるからだ。最初の結婚では妻が麻薬に溺れてしまった。2度目のジル(メリル・ストリープ) とは、一児をもうけながら、彼女のレズビアン癖が破局の因となった。このジルが彼との夫婦生活を暴露した小説を書こうとしている。

《略》
 人生を誰にも束縛されたくないという現実派メリーと、男と女の関係に理想を追い求めるアイザックでは所詮水と油。ささいな口論の果て、 やっぱりエールを愛してる、メリーはアイザックに三行半。憤然としたアイザックは、エールに抗議するため大学に乗り込んだが後の祭りだった。

 1人残され、ウツロな気分で小説の口述録音するが気が乗らないアイザック。彼はマンハッタンの街並みを走りに走ってトレーシーの もとへ駆けつけた。少女は丁度、半年のロンドン留学に旅立とうとするところだった。しかし、愛を告白する彼に対し、トレーシーにはもう ロンドン行きを変える意志はなかった。おかしくて、やがて哀しきニューヨーカーの姿がそこにあった・・・。

ウディ・アレン
監督、脚本、主演(アイザック・デイビス)
1935年12月1日ブロックリン生まれ
「アニー・ホール」(77)でアカデミー作品・監督・主演女優・脚本の4部門受賞。
「インテリア」(78)では敬愛するI・ベルイマン監督の世界に踏み込んだ。
他に「スリーパー」「愛と死」など。

ダイアン・キートン
メリー・ウィルキー
「1946年ロサンゼルス生まれ
「ふたりの誓い」(70)でスクリーンデビュー。「ゴッドファーザー」の好演で名声を獲得。アレンとの共演で「スリーパー」「愛と死」に続き、 77年「アニー・ホール」でアカデミー主演女優賞に輝いた。他に、「ニューヨーク一攫千金」「ミスタ・グッドバーを探して」「インテリア」など。

マイケル・マーフィ
エール
1938年生まれ
“ロバート・アルトマン一家”の中堅俳優として「雨に濡れた舗道」「M★A★S★H」「ギャンブラー」「ナッシュビル」など同監督作品に連続出演
「結婚しない女」でジル・クレイバーグの別れた夫を好演し注目を浴びる。
他に「おかしなおかしな大追跡」など。

マリエル・ヘミングウェイ
トレーシー
1961年11月生まれ。
アメリカの文豪アーネスト・ヘミングウェイの孫。長姉ジョーンは「ローズバッド」で知られる作家、次姉マーゴは売れっ子モデル兼女優。
映画デビューはマーゴ主演の「リップスティック」だが、そのナイーブな感性は姉以上に批評家の注目を浴びた。

メリル・ストリープ
ジル
「ディア・ハンター」でアカデニー賞ノミネート。
舞台では「じゃじゃ馬ならし」などで好評を得る。
映画デビューは「ジュリア」。他に「ジョー・タイナンの魅力」「クレイマー、クレイマー」など。