タイトル 
[1954/上映時間:1時間44分]
製作 
カルロ・ポンティ
ディノ・デ・ラウレンティス
  ザンパノー アンソニー・クイン
監督・原案・脚色 フェデリコ・フェリーニ   ジェルソミーナ ジュリエッタ・マシーナ
脚色 トゥッリオ・ピネッリ   キ印 リチャード・ベースハート
製作国   音楽 ニーノ・ロータ

 人間とはいったい・・・その問題に関して監督フェデリコ・フェリーニは悲惨さという設定の中で、愛、哀しみ、 怒り、暴力ect を凝視しつづけて赤裸々なまでにこの作品で人間性の解答を引出そうとしているといえる。

 粗野な曲芸師ザンパノーと心の優しい少し頭の弱い女ジェルソミーナの葛藤がもちろん全篇を引きづってゆくので あるが、その中でジェルソミーナと“キ印”と呼ばれる綱渡りの青年との触れ合いがある。この2人は少々普通人より も頭が弱いと蔑まれていながら心の触れ合いの美しさは本当の人間性からきているのではないだろうか。

 1954年にベネチア映画祭でサン・マルコ銀獅子賞を受け、翌55年にはイタリア映画ジャーナリズム協会監督賞を 受賞。そしてアメリカに上陸したこの作品はニューヨーク映画批評家協会最優秀外国映画賞を獲得し絶賛を博すとともに 57年にはついにアカデミー最優秀外国映画賞まで授与されたのである。

 フェリーニはロッセリーニのかの戦後イタリア・ネオリアリズム時代の傑作「無防備都市」や「戦火のかなた」の シナリオを書いて映画界に名を知られた。この作品は彼の第3作目の作品にあたる。脚本はフェリーニ自身とトゥッリオ ・ピネッリ、作家エンニオ・フライアーノ合作。撮影は「戦火のかなた」「にがい米」のオッテロ・マルテッリ。

 音楽はニーノ・ロータ。主題曲「ジェルソミーナ」はまさに名曲中の名曲と言われ、時代を越えて流れつづけて いる。

 寄せ打つ潮騒と風の音しか聞こえない寂しすぎる砂丘の上に貧しいさびれた家が建っていた。ジェルソミーナは 5人の妹と母親にかこまれて暮らしていた。近くに住む村人たちはジェルソミーナのことを少々頭の弱い娘だと言っていた。 ある日、彼女の姉を妻にしたザンパノーが訪れた。

 ザンパノーは曲芸師で荒くれ男でもあった。彼女の姉は彼の虐待のために病死。彼はジェルソミーナを死んだ姉の 穴埋めのために雇いにやってきたのであった。母親に1万リラを払ってジェルソミーナの意志を無視して曲芸一座に入れた。 その生活はザンパノーの妻としてのはじまりでもあり、暴力で犯されるしかなかったといえた。

 冬、旅から旅へのオート三輪の生活には厳しい季節の到来。ローマ郊外にある曲芸団に身を置いた。そこにいた 綱渡りの“キ印”と呼ばれる若者にジェルソミーナは好感をもった。若者の奏でる小さなヴァイオリンの美しいメロディは 哀切にみちた清らかな調べでジェルソミーナの心を魅きつけた。

 若者を殺害してしまったザンパノーは逃亡するのに足手まといのジェルソミーナを道端に残して立ち去ってしまった。 そして数年後、サンパノーはやつれはて、ある村で殺した若者が弾いていた哀しく美しいメロディー耳にした。 歌っている子供たちに聞くと4、5年前に病死した女が教えてくれたという。

 夜の闇から白波がサンパノーに迫り、風にのせられてジェルソミーナの歌声が耳を覆った。サンパノーははじめて寂しさに 身体がふるえ、その肉体のどこからともなく嗚咽がもれ涙が流れた。夜の闇にザンパノーは溶け込み、砂浜にいつまでも 彼の嗚咽が続いていた・・・。

アンソニー・クイン
ザンパノー
 1953年に「革命児サパタ」で“アカデミー助演男優賞”を獲得。 1915年4月21日、メキシコのチウァチウァに生まれた。1936年に映画俳優としてスタート、56年の「炎の人 ゴッホ」では2度目のアカデミー賞を獲得。「平原児」、「大平原」、「ノートルダムのせむし男」「アラビアのロレンス」など。

ジュリエッタ・マシーナ
ジェルソミーナ
インテリ女優の誉れが高く、文学士の学位をもつ。フェリーニ監督の妻でもある。 1948年、アルベルト・ラットゥアーダ監督の「無慈悲」で映画界にデビュー。「ヨーロッパ1951年」、「嘆きの7時間」、 「わが生涯のロマンス」、「ペテン師」、「カビリアの夜」など。

フェデリコ・フェリーニ
監督・原案・脚色
1920年1月20日生まれ。彼の名を決定的にしたのはロベルト・ロッセリーニ 監督の「無防備都市」(45)、「戦火のかなた」(46)の原案及び脚色に協力したこと。「青春群像」、「崖」、「カビリアの夜」、 「甘い生活」、「8 1/2」、「魂のジュリエッタ」など。

ニーノ・ロータ
音楽
最近作「ゴッドファーザー」で映画音楽界を代表する巨匠となる。「道」における テーマ曲は今や映画音楽のスランダード・ナンバー化している。1911年12月3日、ミラノ生まれ。「平和に生きる」、「大いなる希望」、 「戦争と平和」、「太陽がいっぱい」など。