タイトル 
リップスティック[1976/米]
製作 
フレディ・フィールズ   クリス マーゴ・ヘミングウェイ
監督 ラモント・ジョンソン   カーラ アン・バンクロフト
脚本 デビッド・レイフィール   ゴードン クリス・サランドン
音楽 ミシェル・ポルナレフ   キャシー マリエル・ヘミングウェイ

 「全米一のセクシュアルな女」といわれ、華麗なファッションの世界に生きる若き美貌のトップモデルを、突然 襲った戦慄の恐怖・・・。それはあまりにも残酷で衝撃的な暴行事件であった。
 しかし、彼女ははたしてレイプ《強姦》 されたのか、否か?裁判は思わぬ展開をくりひろげていく。

 これは、《レイプ》をテーマに、「ラスト・アメリカン・ヒーロー」「ガン・ファイト」などのTV出身の俊才ラモント・ ジョンソンが、抑圧された現代社会に潜む暴力的ともいえる欲望を鋭い目でとらえたセンセーショナルな話題作である。 全米で公開と同時に大ヒットした。

 ジャーナリスティックな話題もさることながら、スターづくりにかけては天才的な閃きを持つ大プロデューサー、 ディーノ・デ・ラウレンティスが、「70年代の顔を持つスター」として、有名な作家アーネスト・ヘミングウェイの孫娘 である米のファベルジュ香水の専属モデル、マーゴ・ヘミングウェイを主役にスカウトした。

 共演は「狼たちの午後」のクリス・サランドン、「マンディンゴ」のペリー・キング、「奇跡の人」のアン・バンクロフト、 そして妹役にはマーゴの実の妹アリエル・ヘミングウェイ(14歳)も特別出演している。脚本は「セルピコ」「コンドル」の デビッド・レイフィール。撮影は「ジョーズ」「カッコーの巣の上で」のビル・バトラー。

 全篇に流れる美しいテーマ曲と、映画のなかで重要な役割を果すミュージック・コンクレート(電子音楽)を フレンチ・ポップスの旗手ミシェル・ポルナレフが作曲。アメリカでの意欲あふれる仕事ぶりを見せているのも話題をよぶ。

 ここはカリフォルニアの静かな入り江の波打ち際、成熟した女性の肢体が眩いばかりに輝き、いま、大胆なポーズで カメラの前に立つ「全米一のセクシュアルなモデル」といわれる、美貌のトップモデル、クリス・マコーミック(マーゴ) の撮影現場である。彼女の官能的な唇を大写しにしたリップスティックのポスターは話題を独占していた。

 妹のキャシー(マリエル)に学校の音楽教師スチュアート(クリス・サランドン)を紹介したいといわれ、願いを快く聞き入れたものの彼の 持参した電子音楽のテープを聞く余裕はなく、後日を約束すると、彼は翌日やってきた。部屋に異様な電子音が響き始める とスチュアートは自分の存在を無視されまいとボリュームを上げ、一歩一歩クリスの寝室に向かう。

 学校から戻ったキャシーがそこに見たものは、ベッドの上でもつれあう男と女の姿だった。その後暴行事件として 警察が捜索にやってきたが、クリスは警察官の刺すような視線の前に痛ましい姿で立ちすくんでいた。女弁護士カーラ (アン・バンクロフト)をたずねるが、この種の裁判に勝つ見こみは「100のうち2つ」という。クリスはひるまなかった。 が、

 スチュアートは無罪。クリスは怒りに震えながら法廷を出た。ある日、スチュアートはキャシーを誘いこみ泣き叫ぶ キャシーを捕らえ暴行した。放心状態でクリスのもとに戻ったキャシーは「先生が・・・」と言うなり気を失って倒れた。 クリスは車に積んであったライフルを抱えるとスチュアートの車めがけて突進した。そして射殺した。

 いま、ふたたびクリスは法廷に立っていた。やがて判決が下ろうとしていた。「被告クリス・マコーミックを無罪 とする」・・・。裁判長の声が重々しく法廷に響いた。

マーゴ・ヘミングウェイ
クリス・マコーミック
1955年オレゴン州生まれ。文豪アーネスト・ヘミングウェイを祖父に持ち 3人姉妹の次女として成長。モデル界入り後、5ヵ月の間に「ヴォーグ」「コスモポリタン」「タイム」等の雑誌の表紙を飾り、 《現代にマッチした顔をもつ現代の女性》とマスコミでの反響は爆発的なものになった。

アン・バンクロフト
カーラ・ボンディ
1931年ニューヨーク生まれ。アメリカ演劇アカデミーとアクターズ・スタジオ に学ぶ。ハリウッドからブロードウェイに渡り、58年「シーソーの二人」で舞台に出演。舞台の「奇跡の人」が大ヒットとなりこの 映画化で62年度アカデミー主演女優賞を獲得。「卒業」(67)、「ヒンデンブルグ」(76)など。

クリス・サランドン
ゴードン・スチュアート
ウエスト・ヴァージニア州出身。「バラの刺青」で舞台デビュー。 続いて「冬のライオン」「カンディダ」の舞台に出演して注目された。この「リップスティック」で特異な個性に挑み、見事な演技力 を示している。スーザン・サランドンと結婚。「狼たちの午後」(76)。

ペリー・キング
スティーブ・エディソン
1949年オハイオ州生まれ。父は外科医で、母はヘミングウェイと親交 のあった編集者マクスウェル・パーキンスの娘。作家志望だったが、エール大で演劇を始める。71年、シャーリー・マクレーンと 共演の「ジョエル・デラニーの妄想」で注目を浴びる。「スローターハウス5」(71)、「ワイルド・パーティ」(74)、「マンディンゴ(75)など。

ラモント・ジョンソン
監督
1920年カリフォルニア州生まれ。43年から10年間俳優として、ラジオ、テレビに出演。その後 演出家としてブロードウェイに進出した。映画監督としてのデビューは61年で、「ガンファイト」(71)で注目を浴び、今回の 起用となった。「マッケンジー黄金作戦」(70)、「爆破作戦・基地に消えた男」(72)、「ラスト・アメリカン・ヒーロー」(73)など。