タイトル 
友よ静かに死ね[1976/仏 1時間43分]
製作 
アラン・ドロン【ロベール】   マリネット ニコール・カルファン
監督 ジャック・ドレー   レイモン ローラン・ベルタン
脚本 アルフォンス・ブーダール   マヌー アルベルト・マリア・メルリ
原作 ロジェ・ボルニッシュ   ルシアン モーリス・バリエ

 よき友と美しい恋人、母を想わせる老ギャングの情婦らに囲まれて大胆不敵な犯罪をあたかも少年にように無邪気に 行う男ロベールを主人公にしたこの物語は、男たちがその心の奥底に秘めているロマンと冒険に対する憧れの映像化と いうことができるだろう。

 誰ひとり裏切る者もなく、固い友情で結ばれた男たち。そんな彼らに優しさをそそぐ女たち、古き佳き時代のフランス 人気質に暗黒街に生きる人間の物哀しさを織り込みながら、ドラマはテンポ良く進んでいく。

 暗黒街に生きる男を演じるとき、まさにその本領を発揮するアラン・ドロンが、みずから製作・主演。迎えた相手役 は「ボルサリーノの美女ニコール・カルファンを始めとして、「高校教師」のアダルベルト・マリア・メルリ、「フリック・ ストーリー」「ル・ジタン」などのモーリス・バリエ、「薔薇のスタビスキー」のローラン・ベルタンなどが揃う。

 原作は「フリック・ストーリー」の原作者ロジェ・ボルニッシュの書いたベスト・セラー小説。脚本をてがけた アルフォンス・ブーダールとジャン=クロード・カリエールは、ドレー作品のシナリオを多数手がけているドレー一家の 一員。この作品はドロン=ドレーの仲間の友情の輪から生まれたものである。

 音楽は、古くは「刑事」「鉄道員」のヒット・メロディをはじめ、「アルフレード・アルフレード」などで知られる イタリア映画音楽の巨匠カルロ・ルスティケッリ。シルバーノ・インボリティの軽快な映像をいきいきと生かす彼の調べは リリックで、まさに魅力的だ。

 1946年、パリがまだ戦争の傷跡をなまなましく残していた頃。どこにでもいるような平凡なその男たちこそ、実は 愛車シトロエンを駈って神出鬼没の犯罪をくりかえして警察の激昂を買っているギャング一味だった。マリネットが 《シトロエン・ギャング》と出会ったのは、連合軍の米兵士が我が物顔で振る舞うパリで働いていた1年前のこと。

 ロベールの恋人になったマリネットは、すべてを捨ててティツーヌにある彼の隠れ家にやって来た。ここには感化院 を脱走して以来ロベールが世話になっているフェリシアと、事故がもとで半身不随でいまでは口もきけずに車椅子に 座ったきりの老ギャング、レオンが一緒に住んでいる。

 《気狂い》ロベールをボス格に、《マンモス》のルシアン、《機械屋》レイモン、《めかし屋》マヌー、それに 《大男》ジョーを一味とする《シトロエン・ギャング》は、絶妙のチーム・ワークでこのところずっと成功を続けている。 マリネットは幸せだった。いつまでもこの幸せが続いたらどんなに素敵だろう...。

 レイモンの子の洗礼の日、アジトのスカンボ亭でパーティが開かれたが、警官隊に包囲された。「郊外の警察に電話 しろ、スカンボ亭がギャングに包囲されたって」とロベールはマリネットに言いつけた。ワナにはまったパリ警察と郊外の 警察は同士討ちを演じることになり、そのスキをぬって一味は鮮やかに逃げのびた。

 「まだ手配が廻っていないから」と、盗んだ金でマリネットにプレゼントのブレスレットを買うつもりが、つい強奪 するはめになって女主人に銃弾を撃ち込まれてしまい、ロベールはフェリシアの家に帰って来たときにはもやは虫の息 だった。ロベールは死んだ。悲しみにくれるマリネットと仲間たちを残して、たったひとつのブレスレットのために...。

アラン・ドロン
製作・主演(ロベール)
ジャン・ギャバン亡き後、フランス映画界に君臨するスーパー・スター。 シリアスな役柄が多かったドロンにとって「友よ静かに死ね」は久しぶりに本領を発揮した極め付きのギャング役である。カーリー ヘアを取り入れたイキな姿はドロンの新しい魅力に...

ニコール・カルファン
マリネット
暗黒街に生きる男に限りない愛を捧げる一輪の紅い薔薇、マリネットを演じる。 ドロンと共演した「ボルサリーノ」(69)が本格的なデビュー作で、その後多くの作品に出演している。ドロンの推薦で7年ぶり に相手役に抜擢された。

その他の共演者たち
ローラン・ベルタン(レイモン)
アダルベルト・マリア・メルリ(マヌー)
モーリス・バリエ(ルシアン)
ザビエル・ドゥブラ(ジョー)
ラウラ・ベッティ(フェリシア)
ジャンピエロ・アルベルティーニ(レオン)
レイモン・ビュシエール(コルネリウス)

ロジェ・ボルニッシュ
原作
フランスのギャングに最も恐れられた《スーパー・デカ》の異名をとった元警部が この映画の原作者。在職中の12年間に567人の兇悪犯を逮捕、最高の名誉である警察名誉大章を生前に与えられた唯一人の男である。 「フリック・ストーリー」は彼自身がモデルとなった作品で、この作品でドロンと知り合い、本作品はドロンに捧げた作品。

ジャック・ドレー
監督
1929年生まれ。はじめ俳優だったが助監督に転身してマルセル・カミュ、ジュールズ・ダッシンなどに ついた。監督第1回作品は60年のアリダ・バリ主演の「Le Gigolo」。他に「太陽が知っている」(68)、「ボルサリーノ」(69)、 「「水の中の小さな太陽」(71)、ボルサリーノ2」(74)、「フリック・ストーリー」(75)など。